夢分析 とは | 意味・まとめ by wikiSmart ウィキスマート

フロイト_夢判断_夢分析_夢形成のプロセス 心理学
フロイトの「夢形成のプロセス」
心理学

夢分析(ゆめぶんせき 独: Traumdeutung)とは、とは深層心理学において、無意識の働きを意識的に把握するための技法。オーストリアの精神医学者であったフロイトが夢の持つ心理的な意味について記述を試み、『夢判断』(1900年)を出版。ジークムント・フロイトの創始した精神分析学における夢分析と、カール・グスタフ・ユングの分析心理学では、夢分析の意味も解釈の方法論もまったく異なっている。

フロイト(精神分析学派)

夢の内容(=顕在内容)から無意識を探り、手法。夢分析には、無意識、自我、夢の性質、夢の形成過程などの概念が重要である。

精神分析学の理論では、夢の世界は無意識が意識に混入してくるため、意識の側から無意識を理解するのに適している。ジークムント・フロイトは、夢(独: Traum)とは抑圧されていた願望を幻覚的に充足することによって睡眠を保護する精神の機能であると考えた。

夢を思い出すためには自由連想法を行い、夢を構成していた場面や要素をたどってゆく。そして前日の体験、本人の性格、生育歴などを考慮しながら浮かんできた夢を分析する。

夢分析において分析の対象になるのは無意識の内容(エス、欲求、願望、衝動)と夢の表現を歪める傾向(超自我、自我の防衛機制)のふたつである。

夢において願望は形をかえて現れることがある。たとえばペニスは蛇、剣、銃。ヴァギナは穴、窪み。母親は家などである。

フロイト_夢判断_夢分析_夢形成のプロセス

フロイトの夢とは

フロイトは「夢は私たちの心が作り出したもの」と述べ、夢は身体的現象でなく心的現象である。さらに「夢は無意識への王道である」と述べ、夢は患者の無意識に抑圧されている内容が反映されるいう。夢は、後述する「夢の作業(dream works)」を通して構築され、無意識の内容がそのまま反映される訳ではない。しかし、夢を見た人は、その夢が何を意味しているのかを本当は知っているが、知らないと思い込んでいる。思い出せないのは「抵抗」によるものだと説明される。

フロイトは、夢は「願望充足(快楽を得ること)」を目的としており、夢を通して患者の無意識における葛藤や願望を分析でき「夢は解釈可能である」という立場を取る。また、夢の支離滅裂性に対しては、「夢は思考を幻覚によって表現する」という立場をとる。幻覚というのは、覚醒時に過去の出来事を思い出すこととは異なり、五感を伴い、あたかも現実に起こっているように感じられることを指す。その意味では、神経症の幻覚と夢は本質的には同じだという。フロイトは、夢形成の問題が恐怖症や強迫観念や妄想観念の精神病理学と基本的に関連すると考えており、夢分析(夢判断)を通して、神経症の治療を目的している。

フロイトは、夢について、初めに次のような特徴を見出している。「まず、夢とは、眠っている間に働きかけてくる何らかの刺激に対する心の反応である。その刺激は、主に視覚像(映像)として体験される。しかし、刺激はそのまま夢に出てくるわけではない。」「刺激に対する反応が形を変えて夢となる」。

フロイトが夢を分析しようとしたきっかけには、 「イルマの注射」の夢の分析(1895)、自身の父の死(1896)、自己分析(1897)がある。また、グリージンガーが夢と精神病とに共通の性格として願望充足をあげており、フロイトはここに夢と精神病との心理学的な鍵があるとみなしていた。夢分析で、夢の理解を通じて患者に患者の無意識的願望を告げる事で、ヒステリーや神経症が治ると考えられている。

フロイトの夢分析の方法

フロイトは、患者が自ら「頭の中に浮かんだこといっさいを観察して包みかくさず報告」し、そして、そこから背後の考え(background thoughts)ともいうべき一連の連想を告げる自由連想法を採用している。フロイトは、夢の分析法を象徴的判断(symbolic dream-interpreting)*、②解読法(decodingmethod)*あるとし、解読法に近いものを採用している。

*象徴的判断(symbolic dream-interpreting):
夢の内容を別のわかりやすい内容に置き換えるもので,これは直感を用いるので芸のようなものである。

*解読法(decodingmethod):
夢を一種の暗号文のようにみて解読のキーを使うもので,機械的に翻訳されてしまうが,キーが信用にたるという保証がない。

  • 夢分析方法の条件
    • 1つ目の条件:ひとつのまとまった全体としての夢でなく夢の内容の個々の部分部分だけを注意力を対象にする。部分部分に砕いて一連の思いつきや考えを報告する(民間の象徴による夢判断=象徴的判断とは異なる)
    • 2つ目の条件:全体的判断ではなく部分的判断(解読法同様)、また、夢はそもそも合成物、心的諸形成物の混合体として捉える。

夢分析とは、自由連想を用い、夢に現れた内容(潜在内容、潜在夢)を解き明かし、潜在的思考(顕現内容、顕現夢)への到達を試みる作業といえる。

フロイト自身の夢分析ー「イルマの注射」の夢

夢は決して支離滅裂な脳活動の表現ではなく、夢の内容はある程度願望充足であり、夢の動機はある願望である。夢の内容はある願望充足(fulfillment of a wish)であり,夢の動機はある願望であると結論した。

夢は願望充足

フロイトは夢は必ず願望夢なのかを考察した。

直接の願望の例:喉が渇いたFが見た夢→水を飲む夢→エトルリアの骨壺から水を飲む→塩辛い感覚刺激と対応→目を覚ます

上記の水を飲む夢は、便宜の夢(dream of convenience)で夢が実際の行動の代わりをする。つまり夢は一般に利己主義を具現化するという。一番簡単な例は子どもの夢でしばしば単純な願望充足である。

夢歪曲(夢の歪曲)

さらにフロイトは「夢は願望充足」にもかかわらず、なぜ悪夢(不安恐怖夢、anxiety-dreams)見たり、直接的な願望が現れないのかを問題に挙げた。夢の顕在内容(manifest content)をどう見るのかではなくて,夢の背後にある夢の潜在内容(latent content)に関するものである。夢が直接に告げずに歪むことを夢歪曲(distortion in dreams)と呼ぶ。

夢の形成における二つの力は願望と願望に検閲を加え、(意識への入場を統制し)表現に歪曲を強制する。フロイトは夢歪曲の現象を検閲(censorship)に喩えて,夢形成には二つの心的力(流れ,組織)があり、第一検問所は夢によって現せられる願望を形成し、第二検問所は意識への入場を許可するかどうかを決める。「意識すること」と「表象すること」は別過程。この仮説からみれば,すべての夢は第一検問所の願望を満たすという意味で願望充足夢である。夢歪曲は事実上の検閲行為であり、「夢はある(抑圧され・排斥された)願望の(偽装した)充足である」当時フロイトは,「神経症的不安は性生活から出てくるものであり,その本来の使命から逸脱されて,使用されることなくやんでしまったリビドーを示している」と考えていたので,「不安恐怖夢は性的内容を持った夢であり,そこに属しているリビドーが変形したものである」とみた。

夢の材料と夢の源泉

夢は明らかにごく近い過去の印象を好む。
フロイトは「どんな夢の中にも,前日(previous day)の体験への結びつきが見出される」
夢は本質的で重要なことではなくて付随的なものを想起させるので、覚醒時の記憶とは異なった原理にしたがって選択を行う。

夢は最早期の印象を自由に駆使し,些細でとっくに忘れられたと考えられるものを引っ張り出す。願望それ自体は幼年時代に由来し,「夢の中に昔のままにいろいろな欲望を持った子どもが生き続けているのを見出す」という。

類型的な夢

もし他人が夢内容の背後に無意識的思想をもらすまいとすれば,他人の夢判断は絶対にできない。そこで,誰の身の上にも同じような具合で現れ,同一の意義があると想定できる類型夢(typical dreams)を知っておくとよいとされる。
フロイトがあげた以下の三つの類型夢はそのままエディプス神話に対応し,⒜は異性の親との交わり,⒝は父親殺し,⒞はスフィンクスの謎を解くことを示唆する。

夢の作業(dream work)

夢は願望をあらわすもの(潜在夢=夢に背後に隠れた意味)であるが、ときに夢は単純なものではなく荒唐無稽で意味不明な内容(顕現夢=本人が実際に見た夢)であることがある。それは、本人がその願望を意識したくないために起こるものだとフロイトは説明する。自分のありのままの願望が、不快、反道徳的、いやらしい、あるいは恥ずかしいとものであった場合、それを無害化しようとしている。

つまり、夢の内容(=本人が意識したくない願望、潜在夢)を分かりにくい形(顕現夢)へ無意識下で変化(=夢の偽装)させている。これを夢の作業(dream work)と呼ぶ。

フロイトは臨床の場で、潜在的な内容である抑圧された思考や空想の解釈作業を容易にするため、(夢の物語で語られるような)夢の顕在的な内容への自由な連想を奨励したほか、また夢の作業で作動する基本的なメカニズムや構造についても説明するよう努めた。フロイトは、夢についての理論的な研究を進める中で、願望実現(願いを充足させるもの)としての理論を超えて、「(夢は)特定の思考形態に他ならない。その形態を作り出すのは「夢の作業(drean-work)」であり、それだけが夢の本質である」と強調するに至った。

夢の作業(dream work)の種類

  • 濃縮(圧縮、condensation):実際の記憶とは異なり、複数の人物や場所、出来事を合成される。例えば、AさんとBさんが合成された人物として夢に出てくるなど。
  • 強調点(心的強度)の移動:実際の記憶とは異なり、状況や人物が別のものにすり替わっていたり、重要な出来事が他の出来事にすり替える。
  • 視覚化:言語的な内容をイメージとして出現させる
  • 象徴化:あるものを他のイメージとして出現させる。
  • 二次的加工(secondary revision):これは覚醒時の思考とよく似た心的機能による加工。

夢事象の心理学

フロイトは夢の諸過程の分析からメタ心理学的な仮説を立てた。

夢の忘却

夢の分析を基に、後に局所論と呼ばれる「意識」と「無意識」の間に遮蔽板のように「前意識」が存在しているという心的システムについて論じている。夢の忘却はその大部分が抵抗の仕業であり、抵抗の克服によって夢を思い出せる。つまり、夢が思い出せないのは「抵抗」が激しいということになるだろう。

退行

フロイトの甥は、さくらんぼを全て食べてしまうという夢を見たという(もちろん、現実では食べてはいない)。こうした願望である潜在内容(=この例では全てのさくらんぼを食べたいという欲動)が、五感としての知覚を伴って体験することがある。これは、夢の「退行」(regression)である。『夢判断』において、フロイトが説明する夢の「退行」という現象は、「幼児のような状態へ戻る」ことを指すものではなかった。

心的局在性

フロイト_心的装置

上述の「退行」という現象を説明するにあたって、心を「心的装置」というものに見立て、それには「心的局在性」という性質を想定した。フロイトはもともと失語症などの研究する神経医学者であり、脳の特定部位ごとの機能・全体としてどのように脳が働くのかを研究していたが、「心的装置」「心的局在性」という概念もその影響を受けていると思われる。「心的局在性」というのは、つまり心の働きの過程を特定の機能ごとに分け、それらの機能の位置関係や順序や方向という性質を持っていると想定している。これは心の局所論の前提となる概念である。

さて、「心的装置」にはいくつかの組織(Systeme)によって構成されており、その組織のことをフロイトは「Ψ組織」と呼んだ。「Ψ組織」には、いくつかの種類がある。前提として、人間の心的活動は必ず、刺激を受け取り、それは神経支配に終わるという流れがある。刺激を受け取るΨ組織を「W(知覚末端)」、その刺激を受け取る神経系を「M(運動末端)」と呼ぶ。

このとき、重要なこととだが、W(知覚末端)に達する緒知覚(記憶装置、Er)は、記憶痕跡(memory-trace)を残す(つまり「記憶」する)。これが覚醒時の心的過程である。

覚醒時に、過去の出来事などを想起する際はイメージや観念が生じるが、そのときの五感としての刺激が完全に再現されることはなく、いわば部分的な「退行」に留まる。しかし、もし、完全な「退行」が起こると、身体体験としての知覚として再現され、現実と区別がつかなくなる。つまり、幻覚が引き起こされる。

睡眠時の覚醒度合いが下がったときも、完全な「退行」が起こり、知覚を伴う「夢」を体験することになる。しかし、夢の形成プロセスで説明したように、そのままの願望ではなく、内容を歪曲した上で実際見る夢として送られてくることになる。つまり、意識下からの排斥が起こすΨ組織(システム)を想定することになる。それをVbw(前意識、the preconscious)と呼び、M(運動末端)の最後組織に位置する。さらに、Vbw(前意識)の背後に位置する組織をUbw(無意識、the unconscious)と呼び、これは前意識を通過する以外には意識へ通過することはできない。

一次行程・二次行程と抑圧

無意識は一次行程に支配されている一方で、前意識と意識は二次行程に支配されている。
一次行程は原始的な心理過程。興奮量が自由に流れており、ただ欲望することしかできない。いとわしい事柄を思考の連関の中に引き入れる能力が欠如している。知覚同一性を作り出そうとするもの。最初から心的システムの中にある。
二次行程は不快の生起へと向かう流出が阻止されるように抑止し、知覚同一性を修正するように機能する。思考同一性の獲得をめざすもの。思考全体は迂回路であり、目標表象とされた満足の想い出に始まり、その想い出に対して同一の充当をなす。人生の経過の中で次第に形成されるもの。

ユング(分析心理学派)

「補償理論」「目的論」「元型」という3つの考え方が中心である。

分析心理学(あるいはユング派)においては、夢は無意識、特に集合的無意識あるいは元型から意識に向けてのメッセージである。そして、そのメッセージをセラピストが抱え、必要に応じてクライエントと共有するなどして、メッセージをクライエントが受け取れるように行われる一連の作業のことを夢分析と呼ぶ。ちなみに、覚醒している状態での想像や空想、あるいは芸術的な表現なども夢と同じように無意識からのメッセージを含むと捉えられているが、夢分析こそがそれを理解するための最も重要であり中心となる方法であるとされる。

ユング派の夢分析は、一般のいわゆる“夢分析”のイメージと異なり、夢の意味を収束的に一つの解釈に導くのではない。夢に対して「拡充法」という技法を時に適用しつつ、対話などを通じて夢からもたらされるさまざまなイメージおよびその持つ意味などを膨らませ、意識と夢(ひいては無意識)とのつながりを再構築し深めてゆく、といった作業を行う。これは無意識からのメッセージと向き合うことによって自己実現に至るための方法であるとされている。

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