心理性的発達理論(Psychosexual development)とは、精神分析学のジークムント・フロイトによる、乳児期から思春期にかけてヒトがどのように身体性・性的体制を形成するかのプロセスに関する理論。フロイトの「性理論三篇」(1905年)にて発表された。子どもには、幼児性欲理論(infantile sexuality)に基づいて、口唇期、肛門期、男根期(エディプス期)、潜伏期あるいは潜在期、性器期という5つの成長段階があり、その期間には身体成長と性的発達が複雑に絡み合って進展するとする。
日本ではなじみが薄い理論だが、欧米、特にアメリカでは「ピアジェの思考発達段階説」と並び、発達(児童)心理学を支える2本の柱の一つとして重要視されている。
ちなみに自我心理学ではこの心理性的発達理論を社会的発達理論まで拡張したエリクソンの心理社会的発達理論(ライフサイクル)という考えがある。この考えがフロイトの性理論に基づいている事はあまり認識されていないが、それでもこの理論自体は広く受け入れられているようである。
フロイトは、エディプス・コンプレックスに発見によって、誘惑理論から、子どもに性的欲望 があるとする性欲論(欲動理論)と理論を発展させていった。
フロイトが性欲を研究しなければならないと思ったのは、精神神経症などの原因としての性的要因の重要性について臨床的観察を得たことによる。そして、性に関して以下のような概念を持ち出し、分析を行なった。
- 性欲動=性的な欲求
- 性対象=性欲動が向かう人間
- 性目標=性的な行為
フロイトの心理性的発達段階
段階 | 年齢 | リビドーのエネルギー | 性格特性 |
---|---|---|---|
口唇期 | 〜満1歳 | 母乳を吸うことと関連し、リビドーの満足は主に口唇周辺に求められる。 | 依存的、常に人に頼り自主性がなく社交的、寂しがり屋で孤独を怖れる。このタイプは往々にして本来の口唇的欲求も強く、食いしん坊、甘いもの好き、食道楽、嗜癖に陥りやすいなどの傾向がある。 |
肛門期 | 2、3歳 | 排泄のしつけと関連し、肛門の感覚を楽しむ。具体的には排泄後の快感である。 | 几帳面、ケチ、頑固、自分の世界を他人に乱されるのを極端に嫌う。反面、ルーズでだらしない。 |
男根期 (エディプス期) |
〜5,6歳 | 関心が男根に集中する時期 | 攻撃的、積極的、自己主張が強く人前に出ることを怖れない。リーダーシップを取りたがる。あるいは人を傷つけることを怖れない。 |
潜在期 | 学童期 | 幼児性欲は一時影をひそめ、子供の関心は知的方面に移行し、比較的感情が安定する時期。 | |
性器期 | 思春期以降 | 初めて性器を中心とした性欲の満足が求められる時期 | 具体的な言及はないが、成熟した感情を持ち、人を愛し受容できる、いわば理想的人格。 |
性欲動(Sexuartrieb)
フロイトは性(Sexualität)のあり方について、以下の3つの視点から論じた。
- 性的異常(性倒錯、性的な逸脱)
- 幼児性欲(infantile sexuality)
- 思春期での変化
性倒錯
- 性対象倒錯(inversion)
- 人に関する倒錯(ゲイ、レズビアン、バイセクシャル)
- 性目標に関する倒錯
- 行為に関する倒錯(フェティシズム、のぞき、露出など)
性目標に関する倒錯は性欲動の固着によって生じ、性欲動はリビドーから生じる。
固着は、性対象の過大評価によって、適切な性目標が果たされないときに、別の性目標がそれに取って代わること。それが特定の性対象から離れて、性目標一般となるとき、病的なフェティシズムとなる(下着フェチ、靴フェチなど)。
幼児性欲(infantile sexuality)
フロイトいわく、幼児は快感を「自体愛的」に充足する。これはつまり、自分の身体で快感を味わうことを意味する。
思春期での変化
性欲動の対象が、自体愛から他者(性対象)へと変化する。
神経症
神経症はパーヴァージオン(性目標倒 錯)の陰画。
成人の性欲動は小児の 生活におけるさまざまな興奮が総括されて統一体になり、一つの目標に向かう欲求になることであると仮定 した。精神神経症は性目標倒錯が圧倒的みられるもの の,これを抑圧して形を変えたものである。
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