共時性 とは | 意味・まとめ by wikiSmart ウィキスマート

心理学
カール・グスタフ・ユング(Carl Gustav Jung、1875年7月26日-1961年6月6日)は、スイス生まれの精神科医であり、分析心理学の創始者である。20世紀における人間の心理学に関する最初の作家であり、最も広く読まれている作家の一人である。フロイト、アドラーと共に、今日の心理学の大きな流れを作った人物であり、ユングの業績は、精神医学、人類学、考古学、文学、哲学、宗教学などの分野に広く影響を与えた。

共時性(シンクロニシティ、英:synchronicity)とは、カール・ユングが1952年に発表した概念で、「偶然に同時に起こった2つの出来事で、因果関係はないが、結果的に意味のあるつながりになること」と定義しており、「意味のある偶然の一致(原因と結果の繋がりを説明することが困難で、単なる偶然と考えるには非常に確率の低い出来事)」を指す。

ユングは量子物理学者のヴォルフガング・パウリと共同研究を行っていたが、彼らの考察は心理学や物理学をはるかに超え、自然哲学の両分野が出会う領域にまで及んでいた。彼らの協力の結果、共時性は経験的な概念から、説明・解釈のための基本原理へと変容している。このように、パウリとユングの共時性に関する研究は、精神と物質、心理学、哲学(形而上学を含む)、科学に統一性をもたらし、より全体的(ホリスティック)な世界観の構築に貢献するものであった。

共時性(シンクロニシティ)の存在は、ユング曰く「精神と物質は同じ世界に含まれている」ため、「同じものの2つの側面」であるという固有の単一現実(一元的現実)の仮説の一因となった。ユングはこれをムンドゥス(unus mundus)と呼んだ。

ユングは共時性について他にも様々な定義を提唱しており、以下のようなものである。

  • 因果関係のないものを一体化させる原理
  • 意味がある偶然の一致
  • 因果関係のない類似

例えば、「虫の知らせ」のようなもので因果関係がない2つの事象が、類似性と近接性を持つことで、具体的な例としては以下のようなものが挙げられる。

  • いつも使っている茶碗が割れたその時、病院で祖父が息絶えた
  • ある人が亡くなったとして、その同時刻にその人の夢を見る
  • とあるレストランで誰かとしばらく会っていない友人のことを話していたらその本人が同じ店に来てしまったこと

そこに直接の物理的な因果関係はないが、人はそこに「繋がり」を感じてしまう。ユングはこれを「非因果的連関の原理」と呼んだ。

シンクロニシティの概念を精確に理解することは困難であることで有名である。「出来事」、「因果」、「意味」、「同時」の概念を説明するため、例として「花瓶が割れた」ときに「祖母がなくなった」というものを以下に例として用いる。

「祖母が大切にしていた花瓶(歴史性)が突然奇妙な音とともに割れ(状況性)、居合わせた人々が不吉に思った(体験)」というような事柄全体が1つの出来事となる。

以上は通常の物理的因果関係において因果関係がないが(花瓶が祖母の死に影響を与えたわけでも、祖母の死が花瓶に影響を与えたわけでもない)、その2つの出来事は共起している(同時に起こっている)のであり、そこに家族は何らかの意味を感じるかもしれない。例えば、この場合、花瓶が祖母の象徴だということが真っ先に挙げられ、意味的関連が両者の出来事を橋渡ししているのである。

ユングと共時性

以下はユングが共時性の例として挙げたものを抜き出したものである。

例1「作家ウィルヘルム・フォン・シュルツは、…自分の幼い息子の写真をシュヴァルツヴァルトでとったある母親の物語を伝えている。彼女はフィルムを現像してもらうために、ストラスブルグに出しておいた。しかし、戦争勃発で彼女は取りに行くことができず、なくなったものとあきらめていた。1916 年に彼女はその間に生まれていた娘の写真をとるためにフランクフルトでフィルムを買った。フィルムが現像されると、それが二度感光されているのがわかった。だがなんと下に写っていたのは彼女が 1914 年に自分の息子をとった写真だったのである! 昔のフィルムは現像されずに、どういう具合か新しいフィルムの中にまぎれこんでいたのであった」。

例2「私が治療していたある婦人は、決定的な時期に、自分が黄金の神聖甲虫を与えられる夢を見た。彼女が私にこの夢の話をしている間、私は閉じた窓に背を向けて座っていた。突然、私の後ろで、やさしくトントンとたたく音が聞こえた。振り返ると、飛んでいる一匹の虫が、外から窓ガラスをノックしているのである。私は窓を開けて、その虫が入ってくるのを宙で捕まえた。それは、私たちの緯度帯で見つかるもののうちで神聖甲虫に最も類似している虫で、神聖甲虫状の甲虫であり、どこにでもいるハナムグリの類の黄金虫であったが、通常の習性とは打って変わって、明らかにこの特別の時点では、暗い部屋に入りたがっていたのである」。

ユングは心理療法家(精神科医)として患者の深層心理を分析する過程で、こうした事例に数多く出会い(他にも千里眼、予知、体外離脱など、いわゆる超常現象が挙げられており、とくに治療が良い方向へ向かい始めるときに超常現象が置きやすいとしている)、それらが患者にとって時に重大な意味を持つことに強い印象を受けた。それが、この問題を深く考え始めた動機であると述べている。

例えば、先ほどの例2に関して、”治療していた婦人”はこの不思議な出来事がきっかけとなり、今まで頑なにしがみついていた現実感から自分を解放することができたのだという。どこまでも合理的にしか物事を捉えられなかった彼女が変化するきっかけを与えたのは、合理的には考えられない“不合理な”共時性の出来事だったのである。ユングは、このような出来事には「元型*」の力が働いていると考えていた。

*元型とは「影」、「アニマ」、「老賢人」など集合的無意識に由来する象徴であり、ユング心理学(分析心理学)における中核概念である。共時性は、それが起きることで「意味」を生成しており(因果関係で繋がるかもしれない出来事同士が、意味により繋がるかもしれない)ユングはシンクロニシティに現われる意味は、「もっぱらユング心理学(分析心理学)の中核概念である『元型』である」と主張している。

共時性は「”内なるイメージ”と”外部での出来事”との意味のある一致」とも定義されており、これにより、特に、その出来事の意味するところに全身全霊で反応した場合、しばしば新しい観点から世界を見ることができるとされる。ユングは共時性を「社会的、感情的、精神的、あるいはスピリチュアルな意味で人間の経験と歴史の全体の基礎を支配している力」だと説明して心理的意義の重要性を公言する一方、「私は、この現象の形而上学的な側面にも時にはそれ以上に興味あるほどで、熱烈な関心を否定することはできない。」とも述べている。

非常に興味深いことに、ユング自身もフロイトといるときに共時性を経験したという。ユングと超心理学について話し合ったとき、フロイトの反応は「まったくのナンセンスだ!」というものだった。そのとき、ユングは体に奇妙な感覚を覚え、次の瞬間、隣にあった本棚から大きな爆発音がした。 ユングはこの現象を超心理学的な立場から説明しようとしたが、フロイトは戯言だと否定した。 それを聞いたユングは、どこからか確信を得て、まもなくまた大きな爆発音がすると予言した。 そして、彼がそう言った途端に、もう一度同じ爆発音が本棚から轟いたのである。

共時性と併時性の違い

ユングは、物事を認識する当事者にとって「意味のある偶然の一致」がある場合に「共時性」、ない場合には「併時性」と呼んだ。ユングは以下のように述べている。「私がこの用語(=共時性)を選んだのは、意味深くはあるが因果的にはつながっていない二つの事象が同時に生起するということが本質的な基準であるように思われたからである。それゆえ私は、単に二つの事象が同時に生起することを意味するにすぎない『併時性』と対照的に、ある同一あるいは同様の意味を持っている二つあるいはそれ以上の因果的には関係のない事象の、時間における偶然の一致という特別な意味において、共時性という一般的概念を用いているのである」。

 

 

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