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うつ病の概要
うつ病(大うつ病性障害)とは、精神障害であり「うつ病エピソード」と呼ばれる症状が見られる気分障害の総称である。日本のうつ病の診療ガイドラインは、うつ病と、DSM-IV*の大うつ病性障害、また単極型(短極性)うつ病はほぼ同じ意味であるとしている。うつ病は、抑うつ気分だけでなく、認知、精神運動、および他の種類の機能障害を伴い、思考、および睡眠、食事、仕事などの日常生活に影響を及ぼす深刻な症状を引き起こす。うつ病と診断されるには、その症状が2週間以上続いていることが必要である。ただし、極めて重症で急激な発症であれば、より短い期間でも診断がつく場合もある。また、双極性障害(躁うつ病)も抑うつ症状を伴うため誤診されることがあるが、別の病気であり、治療法も異なるため注意が必要である。また、うつ病の患者は程度によっては、障害年金を受給できる可能性がある。
DSM:
アメリカ精神医学会が出版している、精神疾患の診断基準・診断分類。正式名称は「精神疾患の診断・統計マニュアル(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)」といい、その頭文字を略してDSMと呼ぶ。
DSMは、精神医学の研究や治療を行っている人に、精神疾患の基本的な定義などを示したものであり、もともとはアメリカでつくられたものだが、現在は国際的に利用されていて、日本でも精神疾患の診断に用いられている。
「DSM-IV」や「DSM-5」のように後につく数字は第◯版を意味し、2013年(日本語版は2014年)に第5版『DSM-5』を出版された。
↑動画「うつ病 〜気分障害の理解とメカニズム〜」の内容
①うつ病とは
②症状と診断
③治療方法について
うつ病の患者は確認されているだけでも年々増えている。
疾病負荷(disease burden)*では、以下の表が示すように「うつ病性障害」は第12位となっている。
*疾病負荷(disease burden):
経済的コスト、死亡率、疾病率で計算される特定の健康問題の指標のことである。疾病負荷は、死亡率や疾病率の両方とも一つの指標に結びつけた質調整生存年(QALYs)または障害調整生命年(DALYs)の用語で数値化される。
障害調整生命年(DALYs)とは、病的状態、障害、早死により失われた年数を意味した疾病負荷を総合的に示すものである。
順位 | 死因 | DALYs (万) | DALYs(%) | DALYs (10万人当たり) |
---|---|---|---|---|
1 | 新生児疾患 | 20,182.1 | 8.0 | 2,618 |
2 | 虚血性心疾患 | 18,084.7 | 7.1 | 2,346 |
3 | 脳卒中 | 13,942.9 | 5.5 | 1,809 |
4 | 下気道感染症 | 10,565.2 | 4.2 | 1,371 |
5 | 下痢性疾患 | 7,931.1 | 3.1 | 1,029 |
6 | 交通事故 | 7,911.6 | 3.1 | 1,026 |
7 | COPD(慢性閉塞性肺疾患) | 7,398.1 | 2.9 | 960 |
8 | 糖尿病 | 7,041.1 | 2.8 | 913 |
9 | 結核 | 6,602.4 | 2.6 | 857 |
10 | 先天異常 | 5,179.7 | 2.0 | 672 |
11 | 背中と首の痛み | 4,653.2 | 1.8 | 604 |
12 | うつ病性障害 | 4,635.9 | 1.8 | 601 |
13 | 肝硬変 | 4,279.8 | 1.7 | 555 |
14 | 気管、気管支、肺がん | 4,137.8 | 1.6 | 537 |
15 | 腎臓病 | 4,057.1 | 1.6 | 526 |
16 | HIV / AIDS | 4,014.7 | 1.6 | 521 |
17 | その他の難聴 | 3,947.7 | 1.6 | 512 |
18 | 墜死 | 3,821.6 | 1.5 | 496 |
19 | マラリア | 3,339.8 | 1.3 | 433 |
20 | 裸眼の屈折異常 | 3,198.1 | 1.3 | 415 |
徴候と症状
少なくとも2週間以上、もしくはほぼ毎日、一日の大半を以下のような兆候や症状が見られる場合はうつ病の可能性がある。
- 性行為、趣味、スポーツなどの活動に対する興味や喜びの喪失
- 持続的な悲しい気分、不安な気分、空虚な気分
- 絶望的な気分、悲観的な気分
- イライラする
- 罪悪感、無価値感、無力感
- 脱力感や疲労感
- 疲れやすく、元気がなく、小さな仕事でも余計な労力を必要とする
- 動くのが遅い、話すのが遅い
- 落ち着きがない、またはじっとしていられない
- 集中力、記憶力、判断力の低下
- 眠れない、早朝に目が覚める、寝坊、または過剰睡眠
- 食欲や体重の変化
- 死や自殺を考える、自殺未遂をする
- 明確な身体的原因がなく、治療しても緩和されない痛み、頭痛、けいれん、消化器系の問題
↑動画「うつ病6つの初期症状」の内容
- 仕事にミスが増える
- 土日に休んでも疲れが取れない
- コリや痛み
- 眠りが浅い
- 落ち着かない
- 突然涙が出てくる
(動画では具体的な内容を交えて説明をしている)
全てのうつ病患者が全ての症状を経験するわけではない。いくつかの症状しか該当しない人もいれば、多くの症状に該当する患者もいる。大うつ病の診断には、気分の低下に加え、いくつかの症状が持続することが必要だが、該当する症状が少ししかなく、しかも苦痛を伴う人は亜症候群性鬱病(SSD)*の治療が有効である場合がある。症状の重さや頻度、続く期間は、個人とその特有の病気によって異なる。また、病気の段階によって症状が異なる場合がある。
*亜症候群性鬱病(SSD):急性の気分障害であり大うつ病よりも重症度は低い
また、抑うつの症状を呈し、うつ状態であるからといい、うつ病であるとは限らない。抑うつ状態は、精神医療においてもっとも頻繁に見られる状態像であり、診療においては「熱が38度ある」程度の情報でしかない。状態像と診断名は1対1で対応するものではなく、抑うつ状態は、うつ病以外にもさまざまな原因によって引き起こされる。
↑動画「うつ病とうつ状態(適応障害)の違い、治療の違いについて」の内容
- うつ病と適応障害の共通点
→どちらもうつ状態(落ち込んだ状態)になる - うつ病と適応障害の異なる点
→原因が異なる- うつ病:脳の病気が原因
- 適応障害:ストレスが原因
抑うつという用語は、失望(例、経済的困窮、自然災害、重篤な疾患)または喪失(例、愛する人の死)により生じる気分の落ち込みや落胆した気分を表現するためにしばしば用いられる。しかしながら、そうした気分をより適切に表す用語は意気消沈(demoralization)および悲嘆である。

出典:https://www.kenkou-club.or.jp/utsu/3-2.jsp
意気消沈および悲嘆の否定的感情には、抑うつによるものとは異なり、以下の特徴がある:
- 断続的にみられ、原因となった出来事に関する思考やその出来事を思い出させる物事と結びついている傾向がある
- 環境や出来事が改善すれば解消される
- 合間に陽性感情やユーモアを示す時期がみられる場合もある
- 広汎な無価値感や自己嫌悪は伴わない
- 気分の落ち込みの持続期間は、数週間や数カ月間ではなく、通常は数日であり、自殺念慮や長期に及ぶ機能喪失が生じる可能性ははるかに低い。
しかしながら、意気消沈や悲嘆を引き起こす出来事およびストレス因は うつ病エピソードを誘発することもあり、特に脆弱性を有する人々(例、うつ病の既往または家族歴を有する人)でその傾向が強い。
『精神障害の診断と統計マニュアル』において、うつ病(大うつ病性障害)として扱われるのは、1日のほとんどや、ほぼ毎日、2 – 3週間は抑うつであり、さらに著しい機能の障害を引き起こすほど重症である場合である。また、死別、経済破綻、重い病気への反応は理解可能な正常な反応である場合がある。
うつ病は免疫力を低下させることがある。おそらくうつ病ではサイトカイン類および血液凝固促進因子が増加し、心拍変動が低下する(いずれも心血管疾患の潜在的危険因子である)ので、うつ病が心血管疾患、心筋梗塞、脳卒中のリスクを高める。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、うつ病や統合失調症など特定の精神障害を持っているとCOVID-19によって重症化する可能性が高いことを指摘している。
うつ病の兆候
うつ病を疑うサイン-自分が気づく変化
- 悲しい、憂うつな気分、沈んだ気分
- 何事にも興味がわかず、楽しくない
- 疲れやすく、元気がない(だるい)
- 気力、意欲、集中力の低下を自覚する(おっくう)
- 寝つきが悪くて、朝早く目がさめる
- 食欲がなくなる
- 人に会いたくなくなる
- 夕方より朝方の方が気分、体調が悪い
- 心配事が頭から離れず、考えが堂々めぐりする
- 失敗や悲しみ、失望から立ち直れない
- 自分を責め、自分は価値がないと感じる など
うつ病を疑うサイン-周囲が気づく変化
- 以前と比べて表情が暗く、元気がない
- 体調不良の訴え(身体の痛みや倦怠感)が多くなる
- 仕事や家事の能率が低下、ミスが増える
- 周囲との交流を避けるようになる
- 遅刻、早退、欠勤(欠席)が増加する
- 趣味やスポーツ、外出をしなくなる
- 飲酒量が増える など
最悪のケース:自殺のサイン
- 自殺をほのめかす言葉を口にする
- 遺書を書く
- 自殺の道具を準備する
- 身辺整理をする
- 自殺未遂をする
↑動画「【簡単チェック】うつ病サインを見逃すな!」の内容
- うつ病のチェックリスト
- 不眠
- 食欲不振
- 頭痛、肩こり、めまい
- 疲勞感
- 気分の落ち込み、意欲低下
- 不安や焦り
- 集中力低下
- ネガティブ思考、絶望感
- 自殺願望
うつ病の治療経過・再発
うつ病の治療経過を示す用語
- 反応:治療によって症状が改善(50%以上)したことを示す
- 寛解:症状がほとんどなくなった状態を示す
- 回復:寛解の状態が2ヶ月以上続いた状態

うつ病の経過
出典:『銀座心療内科クリニック』
うつ病が悪化した場合に使われる用語
- 再燃:治療に反応して良くなりかけた時に症状が悪化した場合のことを指し、寛解したものの、2ヶ月以内に症状が悪化した場合も再燃と呼ぶ
- 再発:寛解して2ヶ月以上無症状だったものの、その後、うつ症状が発症した場合を指す

うつ病の再燃・再発
出典:『銀座心療内科クリニック』
以下は、上述した用語を用いて、うつ病治療の流れを説明したもの。
うつ病の診断
大うつ病エピソード
「大うつ病エピソード」とは、抑うつ気分や興味と喜びの喪失、活動性の減退、それによる疲れやすさの増大といった症状を指す。「エピソード」とは、ある状態が持続している期間を意味する。抑うつエピソードとも呼ばれる。
甲状腺やホルモンの障害など、他の病状が単極性うつ病と混同されることがあるため、それらを除外することが重要である。甲状腺機能低下症は、しばしばうつ病の症状を引き起こし、特に高齢者ではよくみられる。さらに、パーキンソン病はうつ病に類似した症状を呈することがある(例)気力減退、無表情、寡動)。
高齢者におけるうつ病の診断
高齢者では、うつ病によって認知症に似た症状が引き起こされることがあり、具体的には思考の鈍化、集中力の低下、錯乱、記憶困難などがみられる。しかし、もしうつ病であれば、その治療により精神機能が回復することから、医師はうつ病と認知症を判別することが可能である。認知症ではそのような機能回復はない。また、うつ病の人は記憶障害を強く訴えるが、最近の重要な出来事や個人的な事柄を忘れることはめったにない。対照的に、認知症患者は記憶障害をしばしば否定する。
高齢者では、うつ病の診断が難しくなりやすい理由がいくつかある。
- 高齢者は仕事についていなかったり、社会的な関わりが減っていたりすることがあるため、うつ病を発症しても気づかれない場合がある
- うつ病になるのは精神的な弱さからと考え、悲しみや他の症状に苦しんでいることを誰にも話したがらない場合がある
- 感情がみられないことは、うつ病によるものではなく、無関心によるものだと解釈されることがある
- 家族や友人が、うつ病の症状を単に年をとったせいだと考えることがある
- うつ病の症状が認知症など別の病気のせいにされる場合がある
うつ病は特定が難しい場合があるため、高齢者を診察する際には決まって気分について尋ねる医師も多くいる。家族は人格の微妙な変化、特に熱意や自発性の低下、ユーモアの喪失、もの忘れなどの変化に注意を払う必要がある。
うつ病の分類
うつ病概念が歴史上最初に用いられたのは紀元前 5 世紀のヒポクラテスによる「メランコリア(melancholia)」である。メランコリアとは黒胆汁を指 し、これが過剰になると、元気がなくなり、身体愁訴を引き起こすと考えられていた。その後、うつや躁は医療の世界から無視され続けたが、近世の18世紀に入り、身体的な原因を欠きその原因が心理的なものとして神経症が英国の医師ウィリアム・カレン(1712~1790年)により定義付けられ、メランコリーは神経症と区別されるようになっていった。
1899年にはエミール・クレペリンは、統合失調症と躁うつ病とに大きく分け、うつ病は躁うつ病に含まれた。
古典的分類
うつ病を原因によって3種類に分ける捉え方が広く用いられていた。
心因性うつ病
心理的原因によって起こる場合。社会や家庭のストレスや人間関係などのストレスによる心理的負荷の事を指すことが多い。
身体因性うつ病
身体疾患や薬物などが原因の場合。アルツハイマー型認知症や脳梗塞、過去の頭部外傷など脳の病気や、甲状腺機能低下症や脳炎などの身体の不調などが脳の働きや感情に影響を与えている場合を指している。また、副腎皮質ステロイドなどの薬剤が原因になっている場合もある。
内因性うつ病
素因を持っている場合。心因(ストレス)のみでは説明がつかず、明らかな外因がないものを指す。性格傾向や認知面、更には気質などの内面が原因である。
重症度別の分類
抑うつ障害群
抑うつ障害群は気分障害に属する。
以下は、ICD-10の分類とDSM-5に記載されている抑うつ障害群(Depressive Disorders)の分類である。
ICD-10 (F30-39) | DSM-5 抑うつ障害群 |
---|---|
|
出典:『DSM‒5病名・用語翻訳ガイドライン(初版) 日本精神神経学会 精神神経学雑誌 第116巻 第6号(2014) 429‒457頁』 |
*DSMとICD:
医学的には、DSMとICDがどちらも診断の参考とされている。ただし、WHOに加盟している国には疾患統計の報告にICDを使う義務があり、日本でも公式な診断や報告、行政的な認定などには基本的にICDが用いられている。
より詳しい分類については「気分障害>分類>うつ病(抑うつ症候群)」を参照。
双極性障害
双極性障害はうつ病とは異なるが、双極性障害の患者が大うつ病の基準を満たすような極端に気分低下を経験する(「双極性うつ病」と呼ばる)。しかし、双極性障害の患者は、うつだけでなく「躁状態(そうじょうたい)」と呼ばれる極度に高揚した状態 (多幸感または過敏性) や、躁よりも程度の軽い「軽躁状態」と呼ばれる状態も交互に経験する。
双極性障害(躁うつ病)
「子ども情報ステーションby ぷるすあるは」より引用
原因
うつ病の原因は正確には分かっていない。多くの精神障害と同様に、以下のような様々な要因が関与している可能性がある。
- 生物学的な違い:
うつ病の人は、脳に物理的な変化があるようである。 これらの変化の重要性はまだ不明であるが、最終的には原因を特定するのに役立つ可能性がある。 - 神経伝達物質:
神経伝達物質は、うつ病に関与している可能性のある天然の脳内化学物質である。最近の研究では、これらの神経伝達物質の機能や作用の変化、および気分の安定維持に関わる神経回路との相互作用が、うつ病とその治療に重要な役割を果たす可能性があることが示唆されている。 - ホルモン:
体内のホルモンバランスの変化が、うつ病の原因の可能性がある。ホルモンの変化は、妊娠や分娩後 (分娩後) の数週間から数カ月の間に起こることがあり、甲状腺の問題、閉経、その他の多くの病態によっても起こり得る。 - 遺伝:
うつ病は、血縁者にもうつ病がある人に多くみられる。研究者たちは、うつ病の原因に関与している可能性のある遺伝子を特定しようと試みている。
リスク要因
現在の研究では、うつ病は遺伝的、生物学的、環境的、心理的な要因が組み合わさって起こることが示唆されている。男性よりも女性の方がうつ病と診断されることが多いが、これは女性の方が治療を求める傾向が強いことが一因である可能性がある。
うつ病はどの年齢でも起こる可能性があるが、多くは成人期に発症する。うつ病は現在では小児および青年にも発症すると認識されているが、ときに抑うつよりも過敏性が顕著に現れる。成人の慢性的な気分障害や不安障害の多くは、幼少期の高い不安感も要因のひとつである。
特に中高年のうつ病は、糖尿病、がん、心臓病、パーキンソン病など、他の深刻な疾患と併発することがある。これらの症状は、うつ病を発症すると悪化することが多い。これらの身体的疾患のために服用した薬が、うつ病を助長するような副作用を引き起こすこともある。
うつ病の発生や引き金となるリスクを高めると考えられる要因には、以下のものがある。
- 自尊心が低い、依存心が強い、自己批判的、悲観的などの特定の性格特性
- 身体的虐待、性的虐待、愛する人の死や喪失、困難な人間関係、経済的問題など、トラウマやストレスになるような出来事
- 人生の大きな変化
- 血縁者にうつ病、双極性障害、アルコール依存症または自殺の既往がある
- レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーであること、または男性か女性かはっきりしない性器の発達にばらつきがある(インターセックス)こと。
- 不安障害、摂食障害、心的外傷後ストレス障害など、他の精神障害の病歴
- アルコールまたはタバコなどの乱用
- 癌、脳卒中、慢性疼痛、心臓病などの重篤なまたは慢性的な病気
- 高血圧の薬や睡眠薬など、特定の薬(自己判断で薬を止めるのではなく医師に相談すべきである)
うつ病の合併症・悪影響
うつ病は、本人だけでなく家族に多大なダメージを与える深刻な病気である。うつ病は治療しないと悪化することが多く、その結果、感情、行動、健康上の問題が発生し、広範囲の影響を及ぼすようになる。
うつ病に伴う合併症・悪影響の例としては、以下のようなものが挙げられる。
- 心臓病や糖尿病の原因となる過剰な体重や肥満
- 痛みまたは体調不良
- アルコールや薬物の乱用
- 不安障害、パニック障害、社会恐怖症
- 家庭内の葛藤、人間関係の悩み、仕事や学校での問題
- 社会的な孤立
- 自殺願望、自殺未遂、自殺行為
- リストカットなどの自傷行為
- 病状による早期死亡
うつ病による身体症状は以下のものが挙げられる。
また、高齢者のうつ病患者は、以下のような悪影響も与える。

高齢者のうつ病の背景要因と他の健康問題に及ぼす影響
「一般社団法人 日本健康倶楽部」より引用
年齢ごとのうつ病の特徴
小児および10代のうつ病症状
小児および10代の若者におけるうつ病の一般的な徴候および症状は成人のものと類似しているが、いくつかの相違点がある。
- 小児のうつ病の症状には、悲しみ、イライラ、くよくよ、心配、うずきや痛み、登校拒否、体重減少などある
- 10代では、悲しみ、イライラ、否定的で無価値な感じ、怒り、学校での成績不振や出席率の低下、誤解されていると感じたり極端に敏感になる、娯楽用の薬物やアルコールを使う、食べ過ぎや寝過ぎ、自傷行為、活動への興味喪失、社会的交流の回避などが症状として現れることがある
高齢者のうつ病症状
うつ病は加齢に伴う正常な現象ではないため、軽く考えるべきではない。残念ながら、高齢者のうつ病は診断されず、治療されないことが多く、病院や親近者に助けを求めることに抵抗を感じることも多くある。高齢者では、以下のようにうつ病の症状が通常と異なるか、あまり目立たない場合もある。
- 記憶障害や人格の変化
- 体の痛みや辛さ
- 疲労感、食欲不振、睡眠障害、セックスへの興味の喪失(薬によるものではない)
- 社交の場に出かけたり、新しいことをするよりも、家にいたいと思うことがよくある
- 自殺願望がある(特に年配の男性)
また、老人性うつ病と認知症は症状が似ており、家族や知人が勘違いすることがある。

出典:湧永製薬株式会社
うつ病の治療
うつ病は、たとえ重症であっても治療が可能である。治療の開始が早ければ早いほど、その効果は高まる。うつ病は通常、薬物療法、心理療法、またはこの2つの組み合わせて治療する。これらの治療で症状が軽減されない場合は、電気けいれん療法(ECT)や深部脳刺激療法(DBS)などがが検討される場合もある。
うつ病の影響が同じ人はおらず、治療法も一律とは限らない。患者に合った治療法を見つけるには、試行錯誤が必要な場合がある。
詳細は「うつ病の治療」を参照。
薬物療法
抗うつ薬の種類は以下の通りである。
分類 | 化合物名 |
---|---|
MAO阻害薬* | フェネルジン、トラニルシプロミン、イソカルボキサジド |
三環系抗うつ薬 | アミトリプチリン、イミプラミン、クロミプラミン、トリミプラミン、アモキサピン、ドスレピン、ロフェプラミン、ノルトリプチリン |
四環系抗うつ薬 | マプロチリン、ミアンセリン、セチプチリン |
選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) | フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラム |
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 (SNRI) | ミルナシプラン、デュロキセチン |
ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬 (NaSSA) | ミルタザピン |
*MAO阻害薬:
現在、日本では抗うつ薬としてのMAO阻害薬は臨床では認可されていない
心理療法

出典:専門家プロファイル
うつ病患者には、数種類の精神療法(「トークセラピー」 とも呼ばれ、特定の用語ではなくカウンセリングとも呼ばれる)が役立つ。うつ病の治療に特化したエビデンスに基づくアプローチの例としては、認知行動療法(CBT)、対人関係療法(IPT)、問題解決療法が挙げられる。
その他の治療
- 電気けいれん療法(ECT)
- 高照度光照射療法
- 磁気刺激治療(TMS、rTMS)
うつ病の予防
うつ病を予防する確実な方法はないが、以下の方法が役立つことがある。
- ストレスをコントロールし、回復力を高め、自尊心を高めるための対策を講じる
- 特に危機的な状況下では、家族や友人に連絡し、厳しい状況を乗り切る助けを借りる
- うつ病の悪化を防ぐために、問題の徴候が現れたらすぐに治療を受ける
- 症状の再発を防ぐために、長期の維持療法を受けることを検討する
- 運動するように心がける
- 自分自身で現実的な目標を設定する
- 他の人と一緒に過ごすようにし、信頼できる友人や親類に打ち明ける
- 自分を孤立させないようにし、他の人に助けてもらうようにする
- 気分がすぐに良くなるのではなく、徐々に良くなることを期待する
- 結婚や離婚、転職などの重要な決断は、気分が良くなるまで延期する。あなたのことをよく知っていて、あなたの状況をより客観的に見ることができる人と、決断について話し合う
- うつ病についての知識を深める。
- 臨床試験に参加する
臨床試験とは、病気や状態を予防、発見、治療するための新しい方法を検討する研究である。臨床試験の目的は、新しい検査や治療が有効かどうか、安全かどうかを判断することである。臨床試験に参加することで利益を得られる場合もあるが、臨床試験の第一の目的は新しい科学的知識を得て、将来、他の人をより良く助けられるようにすることであり、それを参加者は知っておく必要がある。
うつ病と自殺
自殺既遂者に対する調査からは、うつ病等の気分障害が自殺の要因として特に重要であることが明らかになっている。
睡眠障害とうつ病の関連性
うつ病患者の約8割が睡眠障害を経験するといわれている。寝つきが悪いこともあれば、眠り続けることが難しい場合もある。また、眠りすぎてしまう場合もある。うつ病も不眠症も、脳内の化学物質が関係している。 神経伝達物質の変化やホルモンのアンバランスが、睡眠と気分の両方に影響を及ぼすことがある。
長年、研究者たちは、うつ病と不眠症のどちらが先に起こるかを研究してきた。その結果、この2つの問題はしばしば密接に関連し、互いに悪化させることが明らかになった。研究によると、睡眠障害はうつ病が始まる前に起こることが多いようである。うつ病を感じる前に不眠を経験することで、うつ病の重症度が増す可能性がある。
米国睡眠学会は現在、不眠症をうつ病の症状としてのみ捉えるのではなく、別の疾患として特定する必要があるかどうかに細心の注意を払うよう、治療提供者に促している。
相談窓口
うつ病の可能性がある場合は、まず医師または医療従事者の診察の予約を取ることから始めるのが望ましい。かかりつけの医師、または精神疾患の診断と治療を専門に行う医療機関が考えられる。
相談窓口一覧(悩み、仕事、依存症)「こころの健康に関する相談」には相談窓口・情報サイトを列挙している。
都道府県別の医療機関検索サイト
北海道 | 北海道医療機能情報システム |
---|---|
青森県 | あおもり医療情報ネットワーク |
岩手県 | いわて医療情報ネットワーク |
宮城県 | 宮城県医療機能情報提供システム |
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山形県 | 山形県医療機関情報ネットワーク |
福島県 | ふくしま医療情報ネット |
茨城県 | いばらき医療機関情報ネット |
栃木県 | とちぎ医療情報ネット |
群馬県 | 群馬統合型医療システム |
埼玉県 | 埼玉県医療機能情報提供システム |
千葉県 | ちば医療ナビ |
東京都 | ひまわり東京都医療機関案内サービス |
神奈川県 | かながわ医療情報検索サービス |
新潟県 | にいがた医療情報ネット |
富山県 | とやま医療情報ガイド |
石川県 | 石川県医療・薬局機能情報提供システム |
福井県 | 医療情報ネットふくい |
山梨県 | やまなし医療ネット |
長野県 | ながの医療情報Net |
岐阜県 | ぎふ医療施設ポータル |
静岡県 | 医療ネットしずおか |
愛知県 | あいち救急医療ガイド |
三重県 | 医療ネットみえ |
滋賀県 | 医療ネット滋賀 |
京都府 | 京都健康医療よろずネット |
大阪府 | 大阪府医療機関情報システム |
兵庫県 | 兵庫県医療機関情報システム |
奈良県 | なら医療情報ネット |
和歌山県 | わかやま医療情報ネット |
鳥取県 | とっとり医療情報ネット |
島根県 | 島根県医療機能情報システム |
岡山県 | おかやま医療情報ネット |
広島県 | 救急医療 Net Hiroshima |
山口県 | やまぐち医療情報ネット |
徳島県 | 医療とくしま |
香川県 | 医療Net さぬき |
愛媛県 | えひめ医療情報ネット |
高知県 | こうち医療ネット |
福岡県 | ふくおか医療情報ネット |
佐賀県 | 99さがネット |
長崎県 | ながさき医療機関情報システム |
熊本県 | 熊本県医療機能情報検索システム |
大分県 | おおいた医療情報ほっとネット |
宮崎県 | みやざき医療ナビ |
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沖縄県 | 沖縄県うちなぁ医療ネット |
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